「障害者とホームページ

〜 誰もがアクセスできる図書館ホームページを目指して」

このページでは、2003年12月5日(金) 大阪府立中央図書館 大会議室で開催された、大阪府司書セミナー「障害者とホームページ 〜 誰もがアクセスできる図書館ホームページを目指して」の内容を資料から一部紹介いたします。



1.はじめに

ホームページによる情報発信が増えてきたが、障害者がアクセス可能なページが少ないのが現状である。この研修では、障害者に対する支援技術を最初に紹介し、障害者のホームページ利用方法を公共図書館ホームページを例に紹介する。

その上で、障害者にも利用可能なページを作るための配慮事項や国内外のウェブ・アクセシビリティ規準を紹介する。全国の公共図書館や大阪府内の市町村図書館ホームページを例に上げ、アクセシビリティ検証ソフトを紹介しながら、それぞれのホームページの問題を明らかにし、改善のための方策を提示する。


2.支援技術(障害者等が利用している装置やソフトウェア)

2.1 視覚障害者用の支援技術

視覚障害者に対しては画面の内容を読み上げる「スクリーン・リーダー」、インターネットの内容を音声で読み上げる「音声ブラウザ」、画面の情報を拡大する「画面拡大ソフト」などがある。特殊なハードとしては、画面情報を1行分点字で出力する「点字ピンディスプレイ(点字ディスプレイ)」があるが、1台50万円程度と高価である。

2.1.1 スクリーン・リーダー

スクリーン・リーダーは、主に視覚障害者用に開発されたパソコンの画面を音声で読み上げるソフト。文書の本文を読み上げる他、ファイルのオープンやクローズ、メニューやダイアログ項目、アプリケーションが表示するメッセージ、入力内容など、画面上のさまざまな情報を、合成音声で読み上げることができる。スクリーン・リーダーでパソコン画面を全て操作できるのではなく、アプリケーションによっては音声対応出来ないものもある。

  1. 「95Reader Ver.5.0(XP Reader)」
  2. 「JAWS for Windows(IBM Version) Version 4.5」
  3. 「PC-Talker XP」
  4. 「WinVoice Ver.1.0」

2.1.2 音声ブラウザ

スクリーン・リーダーとインターネットエクスプローラの組み合わせでインターネットの音声読み上げが可能であるが、視覚障害者に使いにくい面も多い。そこで、ウェブでの操作に特化した音声ブラウザがここで紹介するソフトウェアである。音声ブラウザでは、ウェブページ中のテキストや画像などに付けられた代替テキストを音声で読み上げることができる。

  1. 「ホームページ・リーダー Windows版 Ver.3.01」
  2. しゃべるブラウザ「ボイス・サーフィン Ver.2.0」
  3. 「眼の助−がんのすけ」
  4. ALTAIR for Windows

2.1.3 画面拡大ソフト

弱視や高齢者などで、画面のメニューやボタン、文字を拡大する場合に使用する。背景を黒にして白や黄色で文字を表示する方が見やすい人用に、画面反転機能の付いた製品もある。マイクロソフトのWindowsには標準で簡易画面拡大ツール「拡大鏡」が付属する。

  1. 「ZoomText Xtra Level1(Ver.7.1)」
  2. 「VZoom V1.1 L11」

2.1.4 ブラウザ関連

2.2 聴覚障害者用の支援技術

クローズドキャプション

  1. SMIL(Synchronized Media Integration Language)(W3C)
  2. SAMI(Synchronized Accessible Media Interchange)(マイクロソフト)

2.3 肢体不自由による重度運動障害に対する支援技術

  1. 心友(しんゆう)
  2. オペレートナビEX(Ver 2.0)
  3. Pete(ピート)

3.ホームページのアクセシビリティの考慮点

3.1アクセシビリティとは?

3.2 国際的な規準

  1. W3C/WAI「ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン 1.0」 日本語訳
  2. リハビリテーション法第508条の電子・情報技術アクセシビリティ基準 日本語訳

3.3 大阪府ホームページ「ユニバーサルデザインの考え方」

3.4 首相官邸 IT戦略会議の指針

  1. 首相官邸 IT戦略会議の指針
  2. 解説

3.5 日本の企業のアクセシビリティ規準

  1. 日本アイ・ビー・エム「Webアクセシビリティ(日本語訳)ガイドライン」
  2. 富士通「ウェブ・アクセシビリティ指針」
  3. 日立製作所「Webユニバーサルデザイン・ガイドライン」
  4. マイクロソフト「Webガイドライン」

4.ウェブ・アクセシビリティチェック

ウェブ・アクセシビリティチェックには音声ブラウザを用いて視覚障害者にも同等な情報が伝わるかを確認するのが最も適した方法である。最近では、国内や海外で多くの「ウェブ・アクセシビリティチェックツール」が出ている。しかし、画像に適切な説明がされているかをチェックすることは当然できない訳で、画像にALT属性が入っているかなど機械的な判断しかしないことを注意したい。

4.1 パソコンにインストールして利用するもの

  1. ウェブヘルパー Ver.1.0/2.0/2.0R
  2. WebInspector Ver.2.0
  3. Personal i-Checker
  4. LIFT for Macromedia Dreamweaver Ver.2.0 日本語版
  5. ホームページ・ビルダー
  6. Bobby(英語)
  7. ColorAccess

4.2 ホームページにアクセスして診断できるツール

  1. ウェブヘルパー ASP(A.A.O.バージョン)
  2. ウェブバリアファインダー

大阪府内でアクセシビリティに問題のある公共図書館の事例紹介

4.3 その他のチェックツール

  1. マイクロソフト インターネットエクスプローラーでの確認
  2. Lynx (by patakuti)
  3. ホームページ・リーダー Ver.3.01 お試し版

4.4 HTMLの文法をチェックする

  1. W3C MarkUp Validation Service(英語)
  2. Another HTML-lint gateway
  3. W3C CSS検証サービス

5.公共図書館ホームページのアクセシビリティ状況

5.1 国立国会図書館ホームページ、全国の47都道府県立図書館ホームページ、12政令指定都市図書館ホームページのアクセシビリティの現状

(2003年1月調査)

全国の公共図書館ホームページでアクセシビリティの悪い例

  1. 福岡市総合図書館
  2. 徳島県立図書館

全国の公共図書館ホームページでアクセシビリティのよい例

  1. 宮城県図書館
  2. 宮城県図書館 開館カレンダー 休刊日を文字で表示
  3. 宮城県図書館 障害者サービスのページ ナビゲーション・スキップを使用
  4. 金沢市立図書館 ホームページ作成で音声ブラウザ配慮
  5. インターネットWebページのバリアフリー(金沢市立図書館)
  6. 愛知県田原市図書館

5.2 大阪府内市町村図書館ホームページのアクセシビリティの現状

(2003年11月調査)

国立国会図書館、大阪府立中央図書館、大阪府立中之島図書館、府内の市町村立図書館30館の合計33館のホームページのトップページ、利用案内などの状況について、フレーム使用の有無、画像リンクの有無、MAP利用の有無について等の調査を行った。「ウェブバリアファインダー」では33公共図書館のトップページを調査し、「ウェブヘルパー2.0では、トップページ、利用案内、障害者サービス(ない場合は他に任意のページ)について調査し、数値化を試みた。

90点以上の評価だったのは、四条畷市立図書館、大阪市立図書館、豊中市立図書館、枚方市立図書館、茨木市立図書館、美原町立図書館の6館で、80点台として、吹田市立図書館、泉南市立図書館、貝塚市民図書館、寝屋川市立図書館、和泉市立図書館、堺市立図書館の6館。逆にアクセシブルでない図書館として、20点台の図書館が、岸和田市立図書館、八尾市立図書館、30点台の図書館が、国立国会図書館、40点台の図書館が、門真市立図書館。

大阪府内公共図書館蔵書検索ページでアクセシビリティの配慮にかけるページ

  1. 豊能町立図書館
  2. 箕面市立図書館
  3. 高槻市立図書館
  4. 茨木市立図書館
  5. 八尾市立図書館
  6. 大阪市立図書館
  7. 大阪府Web-OPAC横断検索

6.大阪府立図書館での新たな取り組み

  1. 大阪府立中央図書館 障害者サービスのページ
  2. 大阪府立中央図書館 録音図書ネットワーク配信(実証実験)ホームページ

7.まとめ

  1. 障害者が主体的に自治体ホームページを利用し、その問題点を明らかにし、声に出すことの重要性。図書館ホームページでは利用案内、障害者に対する案内が対象とするユーザーに利用出来るようになっているか?蔵書検索やインターネット予約が音声ブラウザで利用できるように作られているか?これらの問題をユーザー再度に検証してもらうことが必要である。
  2. 自治体担当者、ウェブ製作者へのウェブ・アクセシビリティに関する啓発。特に公共図書館職員の意識の低さとHTMLに関する知識の欠如が問題である。
  3. 障害当事者が自治体職員としてウェブ・アクセシビリティに関わることの必要性。現在、全国の公共図書館には視覚障害者が20名程度働いている。そのほとんどが公共図書館ホームページ作成に中心的に関わっていない。これらの職員が関わることの意義と今後の障害者雇用の面からも自治体として積極的に取り組む事項と考える。

8.参考文献

8.1 出版物

8.2 雑誌・論文

8.3 参考ホームページ

  1. IBM バリアフリーの扉
  2. ZSPC
  3. アクセシブルなウェブをめざす提供者と利用者のための実用サイト(A.A.O.)
  4. こころWeb
  5. ホームページ制作者のためのWebアクセシビリティ解説書(電子情報技術産業協会)
  6. マイクロソフトアクセシビリティホーム
  7. みんなのウェブ:アクセシビリティ実証実験ホームページ
  8. ユーディット


Copyright(C)2004 杉田 正幸(Masayuki Sugita)
最終更新日:2004年7月30日