情報と人をつなぐ「じょいんと懇話会」

Webサイトに見る公共図書館の動向」

                  − ユニバーサルデザインを中心に考える −

 

   大阪府立中央図書館司書 杉田正幸

 

1.公共図書館Web OPACとホームページの現状

  1999年4月には、都道府県立図書館15、市区町村立図書館42、合計57館が

  蔵書検索可能であった。現在2001年11月26日では、都道府県立図書館36、

  市区町村立図書館355、合計391館で蔵書検索可能である。また、全国500館

  以上の公共図書館でホームページを利用して情報発信が行われている。

  インターネットで貸出予約できる図書館は、都道府県立図書館3、市区町村立図書館

  78、合計81館である。これは、ホームページで検索結果画面から直接予約できる

  場合やフォーム入力を利用して予約する場合、メールで予約する場合などの方法がと

  られている。当然、予約をする場合は、その図書館に利用登録されていなければなら

  ない。その他、インターネットを利用した図書館サービスでは、メールレファレンス、

  地域情報の提供、一次資料(貴重書などのデジタル化情報)、インターネット版の図

  書館報などの提供が上げられる。

 (http://www.jla.or.jp/link/public2.html)

 

2.視覚障害者のパソコン環境

(1)パソコン

OS: Windows98,MeなどのOSが利用可能。

    Macは利用不可

 

*入力方式: ローマ字入力、かな入力、6点入力

 

6点入力: パソコンの特定のキーを点字入力するためのキーに見立てて入力。

      入力方式は、F(1の点)、D(2の点)、S(3の点)、J(4の点)、

      K(5の点)、L(6の点)というのが主なもの。例えば、点字で「め」と書

      く場合は、1〜6の点をすべて入力することになる。したがって、F,D,S,

      J,K,Lの六つの点を同時に押すことになる。6点入力ができるかは「メモ

      帳」や「Word」を利用し、上記の六つのキーを同時に押したときに、順番は

      ともかくすべて入力できるかということになる。

 

パソコン操作: 一般にパソコンはマウスを使って操作するものであるが、視覚障害者は

        マウスを使うことが困難である。WindowsというOSは、マウスを使わず

        にキーボードだけで操作できるように考慮されている。例えば、アプリ

        ケーションのメニューバーには、Altキー、スタートボタンにはウィン

        ドウズキー、項目間の移動にはTabキーや矢印キーなどである。

 

*画面出力の確認には、画面音声化(画面読み上げ)ソフトを利用する。

画面読み上げソフトの例: 95Reader(システムソリューションセンターとちぎ),

             PC-Talker(高知システム開発),

             VDM100W(アクセステクノロジー),

             outSPOKEN(富士通中部システムズ),

             JAWS(日本IBM)

 

漢字変換: 視覚障害者が文章を書くとき、漢字変換を音声出力で確認する。

      例えば、「しかく」と打ち、スペースキーを押すと「しやのし、おぼえるの

      かく」と音声出力される。スペースキーを押すと次の候補「しほんのし、じ

      んかくのかく」、さらにスペースで「よっつすうじのよん、つのかく」とい

      うように音声出力が行われる。このように漢字の意味が音声出力され、それ

      を聞きながら文章を作成することになる。

 

*弱視者は、画面拡大ソフトを利用する。

画面拡大ソフトの例: ZoomText(日本電気)

 

*全盲者は画面読み上げソフトに併用して点字出力装置(点字ピンディスプレイ)を利用

 することもある。パソコン画面の現在フォーカスの当たっている部分1行分を6点点字

 で出力されたピンの浮き沈みを指で触れて確認する。点字ピンディスプレイは大変高価

 なもの(1台50万円前後)であり、個人利用はなかなか困難。

点字ピンディスプレイの例: ブレイルノートシリーズ(KGS)、

              PowerBraille(Freedom Scientific)、

              ALVA 544 Satellite(ALVA)

 

*インターネットの画面を読み上げるソフトは数社から発売されている他、フリーのもの

 もある。以下がその代表的なものである。

@ホームページ・リーダー(日本IBM)

Aボイス・サーフィン(アメディア)

B画面読み上げソフト「PC-Talker」または「VDM100W」と「Internet Explorer」の組み

 合わせ

C画面読み上げソフト「JAWS」と「Internet Explorer」の組み合わせ

D画面読み上げソフト「outSPOKEN」と「Internet Explorer」の組み合わせ

E画面読み上げソフト「95Reader」、「PC-Talker」、「VDM100W」とフリーのHP読み上げ

 ソフト「VE2000」(大阪府立盲学校 横田陽氏作)との組み合わせ

F眼の助(がんのすけ)(富士通東北海道システムエンジニアリング)

GMS-DOS画面読み上げソフト「グラスルーツ」または「VDM100」とフリーのMS-DOS用HP読

 み上げソフト「Altair」(日本障害者リハビリテーション協会)または「VEGA」(石川

 准氏作)の組み合わせ

 

3.ホームページのアクセシビリティ

 

*アクセシビリティとは?

アンク.「HTMLタグ辞典 第4版」.翔泳社 (2001)より紹介(省略)

 

*アクセシブルであるためのポイント

IBM Web アクセシビリティ チェックリスト バージョン3.0 」2001年4月30日より(省略)

(http://www-6.ibm.com/jp/accessibility/guideline/accessweb.html)

 

4.1999年の公共図書館ホームページのアクセシビリティ調査

1999年11月3日現在で、インターネット上で蔵書検索可能な全国67公共図書館(都道府県立図書館22、市町村立図書館45)

以下、視覚障害者の利用が困難と思われる項目について調査した結果を報告する。

 

         都県立 市町村立 合計  全体に占める割合

画像リンク    9   21   30  45.5%

フレーム     8   13   21  31.8%

マップ      2    6    8  12.1%

ジャバスクリプト 5    2    7  10.6%

問題なし     6   12   18  27.3%

 

(杉田正幸.「公共図書館におけるインターネット活用と視覚障害者に対するアクセシビリティを考える」.平成11年度千葉県立図書館障害者サービス研修会講演資料)より

 

5.アクセシビリティの高いページを作成するには?

アクセシビリティの高いページを作るために以下のものを使用する。

 

(1)ホームページビルダーのアクセシビリティチェック機能

ページ全体としては、ページタイトルの有無、言語指定の有無、新しいウィンドウを開くリンクの有無、WAVE ファイルの使用の有無、ループ再生の有無、をチェックすることができる。その他、フレーム関連、画像関連、表関連、フォーム関連、title属性の有無、代替テキスト(alt)の有無などをチェックすることができる。ホームページ・ビルダー6.0と6.5でほぼ同等の機能がある。

(http://www.ibm.com/jp/software/internet/hpb/)

 

(2)I-Checkerの利用

I-Checker V. 1.0では、ホームページの内容を音声合成で読み上げる際、もっとも問題となる以下の4項目について自動診断。また、ローカルのHTMLファイルのアクセシビリティを診断するプログラムとして、Personal I-Checkerがある。

@画像リンク にコメント(alt属性)が書かれているかどうかチェック。

Aタイトル情報 が書かれているかどうかチェック。

Bクライアントサイド・イメージマップ のareaにコメント(alt属性)が書かれているかどうかチェック。

Cサーバーサイド・イメージマップ が使用されている場合、警告を出す。

(http://www-6.ibm.com/jp/accessibility/webaccess/i-checker.html)

 

(3)ウェブ・バリア・ファインダー

日本IBMの100パーセント子会社である株式会社インフォ・クリエイツが製作。

WAIに準拠したチェック、修正はもちろんのこと、実際にホームページ・ビルダーで聞いてのチェックなども行う。画像にaltテキストが用意されているか、イメージマップのリンク先にaltテキストが用意されているか、サーバーサイドイメージマップが使用されているか、タイトルが用意されているか、scriptタグに対して、noscriptタグが用意されているかなどをチェックできる。

(http://www.infocreate.co.jp/bf/)

 

(4)J-WAS

「みんなのウェブとして公開。総務省、ウェブアクセシビリティ作業部会が提供しているHTMLのアクセシビリティ診断プログラム。WAIのアクセシビリティチェック項目に加えて日本の特徴や固有の問題を追加して作成したもの。パソコンとiモードのページを診断できる。HTMLの修正機能もある。

(http://www.jwas.gr.jp)

 

(5)Bobbyの利用

BobbyはウェブページのアクセシビリティとHTML仕様との適合を分析するツール。これはCenter for Applied Special Technology(通称 CAST:キャスト)が開発したもの。

ボビーには2種類あり、ボビーのウェブ・バージョンではインターネットのページでURLを入力し、 オンラインでレポートを得ることができる。もう一つは、Bobbyをダウンロードして開発中のウェブページに対してテストすることもできる。

(http://www.cast.org/bobby/)

 

(6)Microsoft Internet Explorer 5.0および5.5

イメージをオフにして、altテキストを表示させ、音声読み上げと同じ状況を作る。

@[ツール] - [インターネット・オプション] - [詳細設定]

Aユーザー補助セクションで「常にイメージの alt テキストを展開する」を選択。

Bマルチメディア・セクションで「画像を表示する」の選択を解除。

 

(7)ホームページ・リーダーなど音声読み上げソフトでの確認

音声でWebの内容を読み上げるソフトのお試し版やフリーソフトを利用する。

 

@お試し版

・ホームページ・リーダー3.0(日本IBM)

 http://www.ibm.com/jp/accessibility/soft/hpr-down.html

・ボイス・サーフィン(アメディア)

 http://www.amedia.co.jp/download/vs200try/index.htm

・眼の助(がんのすけ)(富士通東北海道システムエンジニアリング)

 http://www.netbeet.ne.jp/~feh001/package/gannosuke/demo.htm

Aフリーソフト

VE2000(横田陽)

 http://www.osakapref-sb.ed.jp/vips/ve2000.htm

Altair(日本障害者リハビリテーション協会)

 http://www.normanet.ne.jp/~software/al_wmail.htm

 

6.大阪府立図書館での取り組み

2001年7月の大阪府立図書館ホームページ開設に向けて2000年度から電算システム検討チームを中心にWeb OPAC、館内OPAC、ホームページの検討に入る。

Web OPACでは、音声ブラウザでも利用できるよう、複雑なフォーム入力は避け、ボタンもジャバスクリプトで記述しないように配慮を行った。当館で導入しているWeb OPACのパッケージは、ボタンにジャバスクリプトが使用されており、カスタマイズという形で視覚障害者に利用可能なものとした。当館と同じパッケージを利用しているほとんどの図書館がジャバスクリプトのボタンを採用した検索システムのままカスタマイズなしで利用しているため、視覚障害者の利用が困難である。メーカー側には何度か申し入れを行っているが、障害者対応は別パッケージを採用というユニバーサルデザインの概念から逸脱した考えが見られるのが現状である。

ホームページは、視覚障害者にも配慮した形で、フレームなど画面分割した表示を避け、画像にはalt属性を付けて説明を加えた。Altの確認には、Internet Explorerで画像を右クリックして説明が不可されているかホームページ委員が確認した。また、最終的には、「ホームページ・リーダー」の読み上げを利用して確認を行った。ただ、現状では、適切な画像説明とは言えない部分が多くある。

 

大阪府立図書館蔵書検索

(http://opac.library.pref.osaka.jp/cweb/jsp/search1.jsp)

 

7.アクセシブルでないページの例

(1)大阪府立図書館トップページ(tableタグの悪い例)

   http://www.library.pref.osaka.jp/

(2)茨城県立図書館Web OPAC(フレームとジャバスクリプト)

   http://www.lib.pref.ibaraki.jp/opac/index.html

(3)群馬県立図書館トップページ(フレーム)

   http://www.library.pref.gunma.jp/

(4)三重県立図書館標準検索(画像リンク)

   http://www.milai.pref.mie.jp/general/cgi-bin/SR/second_act?&LCD=24000000

 

 

8.現状と今後への期待、Web製作者へ

(1)画像には適切な説明を付加する。

(2)フレームやジャバスクリプト、は利用しない。

(3)ホームページを作る際は必ず音声ブラウザでの読み上げを確認する。

(4)I-CheckerやBobbyなどを利用してチェックする。

(5)Web製作をしている会社が全くアクセシビリティや障害者のホームページ利用を考

   えていない。それら、専門業者への啓発。

 

9.参考ホームページ

1.日本図書館協会.公共図書館のWebサイトのサービス.東京,日本図書館協会,

  (参照2001-12-05).

  <URL:http://www.jla.or.jp/link/public2.html>

2.日本IBM.バリアフリーの扉.東京,日本IBM,(参照2001-12-05).

  <URL:http://www.ibm.com/jp/accessibility/>

3.World Wide Web Consortium(W3C).Web Accessibility Initiativ.Cambridge,

  Massachusetts,W3C(MIT,INRIA,keio),(参照2001-12-05).

  <URL:http://www.w3c.org/wai/

4.杉田正幸.杉田正幸ホームページ.大阪,杉田正幸,(参照2001-12-05).

  <URL:http://web.ffn.ne.jp/~sugita/>

5.Webアクセスを考える会.Webアクセスを考える会ホームページ.Webアクセスを

  考える会,(参照2001-12-05).

  <URL:http://thinkman.cup.com>



Copyright(C)2004 杉田 正幸(Masayuki Sugita)
最終更新日:2004年7月30日